カンブリア宮殿の番組を中小企業診断士が読み解いてみたらvol.1 (チョーヤ梅酒」

8月13日放送のカンブリア宮殿、いやあ感動しました。チョーヤさんの大ファンになってしまい、早速スーパーに梅酒を買いに走ってしまいました。^^

 

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それはともかく、この番組を中小企業診断士の私なりの視点で整理してみました。いまや、梅酒の国内シェア3割を占めるトップメーカーであるチョーヤ梅酒。名前は全国的に有名ですが、社員数もわずか130人という中小企業です。

 

今回の番組は、主にチョーヤが梅酒を商品化した経緯から、今に至るまでの話でした。プロダクトライフサイクルで見れば、特に導入期から成長期に移るまでの話が主体だったと思います。

 

チョーヤは、創業者が葡萄栽培を始めたことを機にワインを作っていた会社だったようですが、旅行先のフランスで日本よりも遥かに良質なワインが作られている現状を目の当たりにし衝撃を受けて、方向転換を決意します。創業者がSWOT分析をしたのかどうかはわかりませんが、下記のクロスSWOT分析でいうところの市場の脅威と自社の弱みから、回避するという決断をされたのでしょうね。

因みにSWOT分析とは、内部環境と呼ばれる自社の強み(Strength)、弱み(Weakness)と外部環境の機会(Opportunity)、脅威(Threat)を書き出し、現状を分析するフレームワークで、一番わかりやすいのでよく使われる手法です。

更にSWOT分析を一歩進めたクロスSWOT分析を使い、内部環境と外部環境をかけ合わせることで戦略の方向性や改善策が見えてきます。一般的には以下のような方向性が基本セオリーだといわれます。

 

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何故梅酒に目をつけたのかは語られてませんのでわかりませんが、今後核家族化の進展などの市場環境の変化などの先見の目があったのかもしれませんね。

 

当時の日本では梅酒は家庭で作るのが当たり前であったので、一見ビジネスチャンスはないように見えますが、市場環境が変わると、市場規模は十分にあるので販売機会は一気に広がります。同じような理由で、ペットボトルのお茶や水などが挙げられますね。

 

とはいえ、決断するには相当の勇気と自信がなければできることではありません。海外の旅行先でワインをみて事業転換をしたことなども考えると、創業者は感性タイプで直感が鋭い経営者だったのかもしれませんね。

 

プロダクトライフサイクルでいえば、梅酒はこれまでにない商品ですので、導入期からのスタートになります。導入期は商品が市場に認知されておらず、売上も低水準の時期です。とにかく知ってもらうことが最重要課題ですが、コストもかかるので、できるだけお金をかけない地道な販促がセオリーです。

 

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ところがチョーヤは、テレビコマーシャルを打ってしまいました。これは当時の時代だからこそ、まだよかったのかもしれませんが、セオリー的にはリスクが非常に高い宣伝方法だと思われます。実際にも番組でも従業員が辞めたり、不満を漏らしたりしていたことが話されていました。これは真似しない方が良いかと思います。

 

ただラッキーだったのは、成長期が訪れるのが近かったこと、またそれまでやり続けられたことではないかと思います。成長期はお金をかけた広告宣伝は効果的ですので、導入期から成長期の移行はスムーズで、同社の売上も一気に伸びたのではないかと推測します。

 

しかし一方で、成長期になると、大手を含めライバル会社がたくさん出現します。しかもライバル会社は添加物などを使い、安い価格で勝負してきます。これまで昔ながらの製法にこだわり、本物志向で来た同社の売上は伸び悩み、岐路に立たされます。

 

営業マンからも社長に対して、他社と同じように低価格の商品へ路線を変更したほうが良いのではないかと意見が出始めます。社長も悩みます。そして、答えを出し、こう言います。「生き残るためには、他社と同じところに行かん方がいいんちゃうか?誰も見向きもせんかった美味しい梅酒に、我々だけがこだわり抜いたから、ここまで来たんちゃうか!」

 

この選択は実に正しかったと思います。隣の芝生が青く見えるという諺があるように、よそがやっていることの方が誰しもよさそうに見えるものですが、決してそうではありません。恐らく、ここで他社と同じ戦略で価格路線に走っていたら、とっくに大手に潰されていたことでしょう。一方、大手もコストがかかることや、市場規模が小さい商品には興味はありません。私も大手の食品メーカーにいましたので良くわかります。つまり、同社はニッチ戦略を取ることに成功し、今の地位を築いたと言えるでしょう。

 

同社は日本一梅を仕入れる会社です。これは自社の社員だけでなく、多くの梅農家、あるいはその地域を支えていることにもつながります。自社だけが儲かるという考えではなく、誰かのおかげで我が社があり、我が社も誰かのお役に立っていると言うような、高い次元での相互依存の考え方、私はこのような経営のあり方を縁起経営と呼んでおり、このような会社を少しでも増やしていきたいと思っています。同社はその点でも、とても良い事例だったと思います。チョーヤさん、これからも応援したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

諦めるな!というメッセージ