カンブリア宮殿の番組を中小企業診断士が読み解いてみたらvol3「コスモス・ベリーズ」

8月27日の放送はコスモス・ベリーズ(株)の代表取締役、牧野達氏の登場でした。同社は、家電卸のボランタリーチェーン。加盟店は約1万1500社。ここに加盟すると、ヤマダ電機と同じ価格で仕入れができるというメリットがあります。つまり、在庫を持たずに、低価格で仕入れができるのです。また入会金10万円、月会費1万円というハードルの低さも魅力です。これを知っただけで、私は何かワクワクする新しい事業が出来そうな感じがしました。

 

一方で、その裏にはヤマダ電機の現会長との30年前の出会いがあったから実現したと言っても過言ではありません。今回の一番の学びは実はここだったのではないかと思います。人は誰と出会うかによって人生が決まるとよくいわれますが、まさにそうで、このお二人の出会いのエピソードには、お二人の人間的な魅力を感じずにはいられませんでした。お互いに約束を守り続けた関係が、再び縁でつながり、大きく実ったといった感じではないでしょうか。

 

まちの電気屋さんは、ピーク時7万1千店店ありましたが、現在では1万6千店と大幅に減っています。20年以上前の話になりますが、私は海外出張の際に現地法人の日本人担当者にこれと同じ電化製品を買ってきて欲しいと言われ、秋葉原の店のチラシを送られてきたのをふと、思い出しました。当時は、今のように全国展開する家電量販店もなく、その頃福岡にいた私は地元の量販店にチラシを見せて、「この商品をこの価格で売って欲しい」とお願いしたところ、「うちの仕入価格より安い」と言われました。それから考えると、当時の価格ありきの電化製品市場での競争では小さな電気屋さんが生き残っていくには至難の技だったと思います。その代わりに台頭したのが、大手家電量販店です。大手量販店は2000年頃から全国展開を始め、今では市場シェアの7割を占めているようです。

 

しかし現在、少子高齢化が進み、また一人暮らし世帯の増加、地方では買い物難民などの新たな社会の課題もでてきました。まちの電気屋がなくなることで困る方も増えてきているのです。その時に登場した同社のサービスは、まさにこれkらの時代にマッチしたサービスだと言えるでしょう。同社の加盟店は電気屋さんだけでなく、酒屋、ガス屋、引っ越し屋など78業種に亘るようです。また同社では勉強会なども開かれ、異業種ネットワークの推進が図られています。それの目指すものは、「地域のお困りごとを解決する」です。ものあまり時代だといわれて久しいですが、消費は「もの」から「こと」に確実にシフトしています。

 

牧野社長は、「いつまでも商品を売って売買値差の粗利だけでやっていける時代だけではない」と話されてました。私もその通りだと思います。特に中小企業はここにフォーカスしないと、間違いなくジリ貧になるでしょう。そして「困りごとを解決した後は、人は幸せになりたい、生きがいのある人生を送りたいという欲求が湧いてくるので、それに応える小売業を作りたい」とおっしゃってました。この視点は、とても大切です。

 

今回の一番の学びは「人との出会いを大切にする」です。そして「嘘をつかない、約束を守る」。そういう普段の行いの一つ一つをお天道様は見ているのではないでしょうか。