古代ギリシャに学ぶ

日本からギリシャは遠い。直行便はない。フライト時間だけでも18時間、乗り換えまでを含めると悠に20時間は超える。とてもアクセスが良いとはいえない。しかし、心理的には何故かとても日本に近く、親近感を持てる国だった。

 

ギリシャというとよく、「破綻した国でしょ」という人がいるが、実際には破綻はしておらず、破綻寸前ではあったが、今は復興している。破綻寸前になった原因は公務員が増えすぎ、公務員は仕事をしないらしく経済がおかしくなっていったということらしい。日本では大手企業などがよく公務員化していると言われているが、競争力を失いつづければギリシャの二の前になるかもと感じている。

 

今回の旅で私はギリシャがとても好きになった。何より物価が安い。これまで行ったドイツやフランス、イタリア、北欧などは日本の物価よりも1.5倍〜3倍ほど高い感覚がある。しかし、ギリシャは日本よりも物価が安く0.7倍といった感じである。人も陽気で優しい。食べ物が美味しい。そして空気が美味しい。

しかし一方ではギリシャ人は考えなくなったといわれる。プラトンが唱えたイデアにアをつけたら、アイデアになるが、ギリシャ語ではアは否定語。イデアがないという意味になるらしい。彼らはアイデアを馬鹿にしているらしい。ギリシャは観光国であり、人口1000万人に対し、年間3000万人の観光客が訪れている。しかし、ギリシャにはそれしかないので、ギリシャを破綻に追い込みのは難しくないとガイドさんが言っていた。

 

ギリシャといえば、エーゲ海、オリーブをイメージしてしまう。他に何があるかと聞かれると、オリンピックが最初に行われた国、オリンポスの神々はいたのかな?ぐらいの基礎知識しかないままに、今回の研修ツアーに参加してしまった。総勢103名。バス3台で行く大人の修学旅行。

 

ドバイを経由してアテネ空港へ着くと、大型バスでデルフィへ移動。アテネから約3時間。デルフィは世界最古の予言の地として知られる町でオリンピアの次に重要な場所とされていたようだ。その途中、ガイドさんからギリシャについてのお話をいろいろ聞かせていただく。オリンポスの神々は実在していたこと。ワインの発祥地であること。昔から循環型農業を行っていたこと、ヨーロッパで最も親日国であること等。

 

デルフィのホテルに着いたのは夜。翌日の朝、デルフィのホテルから見る景色は、まるで高千穂の山々を見るよう。神々はこのような風景がお好きなようだ。昨日、ガイドさんから聞いた話ではこの地を治めていたのは太陽神アポロ。日本で言えば遍く照らす大いなる神、つまり天照大神にあたるのかな。雲がどことなく龍の形に似ていた。しかも何匹もいる。そしてこの雲たちが私たちが行く場所にいつもついて回っている感覚であり、何か見守られている感じがした。そういえば、この時期は雨がよく降るとの情報を得ていたが、観光期間中1度も雨に見舞われることはなく、これも何かの思し召しかもしれないと感じた。

 

デルフィ(古代ギリシャ語ではデルフォイ)にある遺跡、世界最古の予言の地へ向かう。ギリシャという国の歴史は100年ほどしかなく、かつてギリシャ人はポリス都市という都市国家を作っていた。アテネヴェネチアイスタンブールなどがそうであるが、どこにポリス都市を作るのかなどを占ったのが、これらの予言の地である。かつてここへは、ソクラテスプラトンアリストテレスアレキサンダー大王なども訪れ、予言を聞いたそうだ。私はなぜかこの地に懐かしさというか心地良さを覚えた。

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平和の祭典と言われるオリンピック。オリンピックが最初に行われたオリンピアはとても小さな町だった。陸上、レスリングなど最初は神々が競い合った。スタジアムは神殿の中にあった。神殿の中でスポーツをやっていたということだ。つまり信仰心のもとにスポーツは行われていたということだ。健全な精神に健全な肉体は宿るのだ。日本の武道をイメージしてしまうが、本来は全てのスポーツが信仰心なくしてはやってはいけないのかもしれない。スタジアムに入ると、とても良い気を感じた。男性用は200m、女子用は160m走のラインがある。日頃滅多に走らない私が、何故か走りたくなった。みんなも同じ気分のようだ。風に乗ったように走る。とても気持ちがいい。世界で最初にオリンピックが行われた場所で走る、なんて贅沢な思い出なんだろう。

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オリンピアにある世界で最も美しいと言われるヘルメス像、これは門外不出でこの場所に来ないと見ることができない。ヘルメス像は勿論素晴らしいが、古代ギリシャ時代の石像はどれも精密に作られており、古代ギリシャの人たちがどれだけ真面目で熱心であったかがわかる。それに対して、キリスト教支配下では効率が重視されていき、石像もだんだん雑になっていく。キリスト教支配下で作られたポセイドン像と比べてみると。その違いは明白である。そして、今の日本にも全く同じようなことが起こっているのではないかと思った。職人が育たない風朝や教育。本当にこれで良いのだろうか?確かに効率は重要であるが、本来それ以上に大事なことはあるのではないかと思う。しかし、効率的であることが正義とされ、今の日本も大事なものを見失っているのではないだろうか?そう思わざるにはいられない。

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医療の神様アスクレビオスの聖地、エピダウロス。医療の神様が作った施設は目から鱗だった。円形劇場、スタジアム。西洋医学の父ヒポクラテスは、「食べもので治せない病気は医者でも治せない」と言っている。今の時代、あまりにも薬に頼ろうとしている傾向があるが、本来人間には免疫力や自然治癒力がある。薬に頼るのではなく、これを十分に活かすことが大事ではないだろうかと改めて気付かされた。また円形劇場の中央の石の上に立つと、スタジアム中に声が通る仕組みはとても不思議で、当時の技術の凄さをまざまざと感じた。

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パルテノン神殿アテネにあるドリス式建築の傑作と言われる神殿で、守護女神アテナ像に捧げた戦勝記念堂である。柱や床面の技術の工夫で究極の美を表現している。残念なのはトルコ領時代に爆薬庫として使用されており、敵軍からの攻撃により屋根が吹っ飛んでしまったこと。このような歴史的建築物を、爆薬庫に使うなど全く信じられないが、実際に起こった出来事だ。それからパルテノン神殿と、ポセイドン神殿、エギナ島のアフェア神殿は二等辺三角形で繋がっているらしく、それを聞くと日本の伊勢神宮出雲大社宗像大社のことを思い出さずにいられなかった。

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プラトンアカデメイア跡地は、建物はなく、自然の草原であった。それでも私は特に不思議な感じはしなかった。ここで皆、学んでいたんだなと思った。何もない場所だが、瞑想をしている時になぜか一番思い浮かべる場所である。プラトンの教育理念は、「魂の向け変え」で、現実社会の損得、利権、見栄と体裁の世界から人々の価値観を高貴な世界へと向け変えることが、アカデメイアの教育の目標であったことを学び、今まさに必要な概念ではないかと私は感じた。また、プラトンがいう「想起」や「イデア」。私自身がこのタイミングで、何のためにこの世に生まれてきたのか?自分自身を見つけ直す良い機会になった。

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コインを発明したのは商売の神様、ヘルメスである。日本では三越百貨店の日本橋本店にも祀られている。コインがない時代は物物交換であったが、交換するものが相手が欲しいものとは限らず、争いが絶えなかったそうだ。コインは争いをなくすために発明された。コイン博物館では、14世紀から現在に至る、硬貨やメダルが展示されていた。
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古代ギリシャを滅ぼしたのは、キリスト教であることは言うまでもない。一神教であるキリスト教多神教だった古代ギリシャ人を恐れた。恐れたために、彼らは、書物を全て焼き払い、何もなかったようにしたかったようだ。「見ずして信じよ」。まさに洗脳教育である。同じような国が他にもある。それは日本だ。日本も多神教の国である。アメリカは世界一のキリスト教の国である。戦後、日本人はWGIPという洗脳教育を受けている。戦前の書物を焼き尽くされ、地理や歴史、道徳などの教育も禁止された。武道も一時禁止された。古代ギリシャ人と同様、日本人は恐れられた。バックトゥーザフューチャー。このままだと、日本はギリシャのようになっていくのでないか!?

未来の日本を守るためにさあ立ち上がろう!自分がやれることは何か!そう考えさせられるとても有意義がある観光であった。